こんにちは!弁理士のオムレツです。

《この記事を読んで欲しい人》
商標登録すべきかを検討している人

《この記事を読んで欲しい人》
商標登録すべきかを検討している人
この記事では、
「商標登録ってする意味あるの?」「商標登録しても費用対効果もどれほどあるのかイマイチ分からない、、」
そんな疑問を抱えている方に向けて、商標登録すべきか一発で判断できる『商標判断ステップ』を作成しました。
無料で10分で出来る!ので宜しければ是非ご活用ください!
※なお、特許版(特許を取得すべきか)についてはこちら↓


まずは最低限の2つの確認!
1|「商標に関係する製品・サービスの10年間の累計予想売上」が100万円以上
例えば、製品Aが年間50万円で8年間売れると仮定した場合には、製品Aの生涯予想売上は50万円(年間予想売上)×8年間(継続販売予想年数)=「400万円」になります。
なお、
・「商標取得できて他社がその商標を使えないと仮定した場合の累計予想売上」でお願いします。
・「商標に関係する製品・サービス」が複数ある場合には、それらの累計予想売上の合算値でお願いします。
ちなみに下の式に基づいて算出しています。
【(商標取得にあたっての)ROI 】> 【上記の累計予想売上】×【粗利率】 ÷ 【商標費用】
この式に、
・商標費用(商標を取得・維持するための平均コスト):20万円
・粗利率:(業界ごとに違いますが多くの業界の低基準とされる)20%
・ROI(投資回収率):(良好な投資回収の基準とされる)300%
を入れて計算すると、「商標に関係する製品・サービスの10年間の累計予想売上」は、100万円以上必要ということになります。
2|商標登録できそうかの確認
次に、特許事務所に相談に行く前にAIを用いてその名前やロゴ等が商標登録される可能性があるかを確認してください。
※ たまに特許事務所が無料相談で商標登録の可能性も検討してくれる場合もあるため、その場合は確認不要です。
そこで、商標登録される可能性があるとの回答を得てから、特許事務所に商標取得の相談をするようにしましょう。
AIでその名前・ロゴ等が商標登録されるかどうかを確認する方法は下の記事から!
※記事については現在作成中ですのでもう暫くお待ちください。
なお、商標が商標登録される可能性があるかを確認する方法として、特許事務所に相談することも可能ですが、費用がかかる割に確認の精度はAIを活用した場合と変わらないため、あまりオススメしません。
※商標登録されるかは特許の場合と比べ判断が容易であるため、特許版(特許を取得すべきか)と異なり、「客観的な判断が得られにくいから」というデメリットはほとんどないと思います。
これが商標判断ステップ!
5つのステップで簡単に判断できる!
点数 | 評価例 |
---|---|
5点 | 商品・サービス名が売上の決め手(例:メルカリ、スタバ、iPhone) |
4点 | 広告・パッケージで頻繁に使う主力ブランド名(例:◯◯弁当、◯◯コーヒー) |
3点 | 商品ライン名・社内サービス名(例:社内ツール名「BizTrack」など) |
2点 | 限られた用途で使うサブネーム(例:キャンペーン名、イベントタイトル) |
1点 | 外部にほぼ出さない仮称、開発コード(例:社内開発用「新商品A」) |
点数 | 評価例 |
---|---|
5点 | 既に類似名が存在/流行語で競合と重なるリスク大(例:Chat〇〇、AI〇〇) |
4点 | 人気業界で模倣や先取りのリスクが高い(例:NFT関連、飲食フランチャイズ) |
3点 | 競合他社も存在するが名称は明確に区別できる(例:独自の業界用語) |
2点 | 限定市場・小規模展開(例:地域密着のクリニック名) |
1点 | 単発プロジェクト、外部非公開(例:社内研修用アプリ名) |
点数 | 評価例 |
---|---|
5点 | 造語や意味のない単語で他と被らない(例:Zozotown、Spiruna) |
4点 | 一般語+造語の組み合わせ(例:SushiGo、AirBank) |
3点 | 少し工夫された表現、だが類似例もあり(例:TechBase、SmartFit) |
2点 | 商品の特徴を説明する一般語(例:高速翻訳アプリ、自動水やり機) |
1点 | 完全な説明的名称で識別力がない(例:高性能掃除機、冷却タオル) |
商標取得価値スコア = ブランド価値 × リスク回避効果 × 独自性
(例)
- ブランド価値:4点(広告で主力として使用)
- リスク回避効果:5点(模倣リスクが高い)
- 独自性:3点(少し工夫あり)
→ 計算:4 × 5 × 3 = 60点
スコア | 判断の目安 | コメント |
---|---|---|
90〜125点 | 取得強く推奨 | ブランド資産やリスク対策として非常に価値あり |
60〜89点 | 取得検討の価値あり | 長期的な保護を考えるなら出願すべき |
30〜59点 | やや慎重に検討 | 実使用やリスクの低さを考慮しつつ判断 |
〜29点 | 出願の優先度は低い | 商標取得の費用対効果が低い可能性が高い |
各業種(分野)ごとの判断例
「考え方は分かったけど、点数の付け方のイメージが湧かない、、」
そんな方に向けて各業種(分野)ごとの判断例をまとめてみました!
ご自身の業種の判断例を是非参考にしてみてください!
飲食・食品ブランド
評価項目 | 5点 | 3点 | 1点 |
---|---|---|---|
ブランド価値 | 全国展開を前提としたメイン商品・店名(例:◯◯バーガー) | 地域で認知されるメニュー名(例:三河唐揚げ定食) | 限定企画や一時的な名称(例:春の味祭り) |
リスク回避効果 | よくある名称やジャンルでの競合多数(例:「◯◯Kitchen」など) | 多少の被りがあるが回避可能(例:◯◯亭がいくつかある) | 独自性が高く被りの可能性が低い(例:町内に1軒のみ) |
独自性 | 完全造語・意味を持たない名称(例:Zafra、Morino) | 一般語の組み合わせ(例:レモンノート) | 一般的な説明語(例:唐揚げ弁当) |
アプリ・Webサービス
評価項目 | 5点 | 3点 | 1点 |
---|---|---|---|
ブランド価値 | 会社名や事業の中核となるサービス名(例:ChatWork) | 特定用途・ジャンルに特化した名称(例:FastLog) | プロジェクト開発段階の仮称(例:TestApp) |
リスク回避効果 | アプリストア等で似た名前が多い(例:ToDo◯◯) | 若干の被りがあるが差別化可能(例:QuickNote) | 社内のみで使用し公開予定がない |
独自性 | 意味を持たない造語(例:Trello、Notion) | 一般語+形容語の構成(例:QuickNote) | 汎用語・説明語(例:翻訳メモ) |
美容・ファッション
評価項目 | 5点 | 3点 | 1点 |
---|---|---|---|
ブランド価値 | 店舗名や主要ブランドライン(例:LUXE TOKYO) | 季節商品・一時的ブランド名(例:夏の煌めき) | 施術やサービス名(例:美白パック) |
リスク回避効果 | 流行語や競合使用の可能性が高い語(例:「glow」など) | 一定の識別性あり(例:Veil Color) | 内部資料・表示用で外部影響がない |
独自性 | 造語やファンタジー名(例:REFAI、FUREA) | 印象語を含む一般語(例:Veil Color) | 説明語のみ(例:美白ローション) |
教育・学習系
評価項目 | 5点 | 3点 | 1点 |
---|---|---|---|
ブランド価値 | 教育機関・教材ブランド名(例:StudyHub) | コース名・カリキュラム名(例:英検マスター講座) | 内部資料名・一時的教材名 |
リスク回避効果 | 他塾や講座で類似名称多数(例:Growth Academy) | 業界内で差別化可能な名称(例:英検マスター) | 社内資料や非公開の名称 |
独自性 | 意味のないキャラクター名や造語(例:Piyokun) | 一般語+固有の語(例:MathRoom) | 一般的な説明語(例:高校英語基礎) |
建築・不動産・工務店
評価項目 | 5点 | 3点 | 1点 |
---|---|---|---|
ブランド価値 | 会社名・商品企画名(例:HOME BASE) | キャンペーン・提案プラン名(例:快適プラン2025) | 物件名・社内管理用名称 |
リスク回避効果 | 一般的な建築用語と競合しやすい(例:「工房」など) | 業界内で一定の差別化可(例:○○設計事務所) | 外部公開予定のない名称 |
独自性 | 完全な造語(例:RENOVA、LACREA) | 一般語の組み合わせ(例:木の家プラス) | 説明語(例:快適住宅) |
小売・ECショップ
評価項目 | 5点 | 3点 | 1点 |
---|---|---|---|
ブランド価値 | モール出店・全国展開のブランド名(例:BINI) | 専門商品の屋号・ライン名(例:北欧生活雑貨) | 社内商品コードや倉庫ラベル名 |
リスク回避効果 | 類似店舗名が検索に多く出現(例:ZAKKA SELECT) | 国内で差別化可能なレベル(例:△△手作り雑貨店) | 一般には非公開 |
独自性 | 短い造語・独特な響き(例:COLTAN) | 印象語+一般語(例:Art Market) | 機能・商品名そのまま(例:和食器店) |
BtoBサービス・コンサル
評価項目 | 5点 | 3点 | 1点 |
---|---|---|---|
ブランド価値 | 会社名・メイン事業名(例:NEXTEDGE) | 個別プロジェクト・サービス名(例:改善アクション2025) | 社内活動名・資料名 |
リスク回避効果 | 業界内で似た名称が多い(例:Growth Partners等) | 一部特徴ありで識別可能(例:Strategic Insights) | 社外には非公開で使用しない |
独自性 | 造語・略語で独自性あり(例:NOVIS) | 一般語+造語の組み合わせ(例:ValueLize) | 説明語(例:経営改善サービス) |
医療・福祉・ヘルスケア
評価項目 | 5点 | 3点 | 1点 |
---|---|---|---|
ブランド価値 | 施設名・サービス名(例:SmileCare) | 機器・製品名(例:HEALTH CHECK PRO) | 研究開発段階の仮名称 |
リスク回避効果 | 同業他社で似た名称あり(例:HealthClinic) | 読み・構成で差別化可能(例:FreshLife) | 一般非公開前提の名称 |
独自性 | 医療専門語+造語(例:VenoSys) | 印象語+一般語(例:CareNavi) | 説明語(例:糖尿病管理アプリ) |
アパレル
評価項目 | 5点 | 3点 | 1点 |
---|---|---|---|
ブランド価値 | ブランド全体・シリーズ名(例:LAFURE) | 季節限定ライン名(例:Winter Edge) | 企画コード名や内部管理名 |
リスク回避効果 | 競合ブランドと類似可能性高(例:◯◯wear) | 差別化の余地あり(例:BOSS Jeans) | 限定販売などで外部影響少 |
独自性 | ファッション性のある造語(例:ZAYNA) | 形容語+一般語(例:Urban Muse) | 説明語(例:秋のコート) |
電気・機械・製造
評価項目 | 5点 | 3点 | 1点 |
---|---|---|---|
ブランド価値 | 製品シリーズ全体のブランド名(例:NEOVOLT) | 一部部品・機能系名称(例:CoolFan9000) | 設計資料や図面上の仮称 |
リスク回避効果 | 他社の技術や製品と競合の可能性あり(例:Turbo Boost) | 独自技術での差別化可(例:WindPro) | 一般には流通しない(例:Test Fan) |
独自性 | 技術語+造語(例:ThermoLite) | 技術名+番号(例:AirBoost 700) | 説明語(例:業務用送風機) |
どうやって作ったの?(※ 興味のある人は読んでみてください)
「商標判断ステップ」作成にあたって取り入れた考え方・モデルを簡単にご紹介します。
1|実務での判断基準をモデル化
多くの企業が商標を検討する際に見るのは次の3つ:
- ブランド価値:売上や認知に直結するか
- リスク回避:模倣や先取り出願の懸念はあるか
- 独自性:商標登録できそうか(識別力)
これらは、現場で実際に使われている判断軸です。
2|「掛け算」でバランス重視を表現
得られる価値は、ブランド価値 × リスク回避効果 × 独自性で計算します。
これにより、
・どれか1つでも極端に低いと、取得する意義も小さくなる。
・バランスよく3つが高い商標こそ、守る価値がある。
3|他の知財・マーケティング手法とも整合
ブランド価値スコアと同様に、『多軸評価+掛け算形式』は他の領域でも使われている汎用的なフレームワークです。
例えば、
インターブランドのブランド価値評価モデル
世界的ブランド評価機関「Interbrand」は、以下のような3要素でブランドの強さを評価しています:
- 差別化(Differentiation):他とどれだけ違うか
- 関連性(Relevance):消費者のニーズと合っているか
- 親近感・認知(Presence):市場でどれだけ認知されているか
これらは「ブランドがどれだけ影響力を持っているか」の定性的評価に用いられています。
ブランド・エクイティ(Brand Equity)の構成要素
マーケティング理論では、ブランド価値(エクイティ)は以下のような要素で構成されるとされます:
- 知名度(Awareness):顧客接点の多さに通じる
- 知覚品質(Perceived Quality):影響度の一種
- ブランド連想(Brand Associations):差別化に関係
- ブランド忠誠(Brand Loyalty):影響度と連動
これらも「価値を複数の軸で評価し、統合的に見る」スタイルです。
ブランドスコアカード
企業が内部で使う「ブランドスコアカード」では、以下のように掛け算式でブランド価値を測ります:
- 例:
影響度スコア × 差別化スコア × 顧客接点数(あるいはスコア) - 理由:
1つの要素だけが高くても、全体のブランド価値は限定的と考えられているからです。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
もちろん、商標を取得すべきか否かの判断は、業界や市場におけるブランド力の効きやすさ、競合状況などの様々な要素に左右されるため、個別案件の最良の判断をするのはなかなか難しいです。ただ、この判断ステップを、そのような検討を行う上でのひとつの目安としてご活用いただければ、作成者として大変嬉しく思います。
それでもやっぱり「どうすべきか悩む」という場合は、お気軽にお問い合わせフォームよりご相談ください。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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